前十字靭帯損傷(ACL損傷)

前十字靭帯損傷(ACL損傷)とはABOUT

膝前十字靭帯(ACL) は膝関節内にあって、脛骨(すねの骨)が前へずれないように機能します。前十字靭帯が損傷した状態で、ジャンプの着地やカットの動作をすると、少し膝がずれたような感覚(膝崩れ)が生じます。この膝崩れを繰り返すと少しづつ軟骨や半月板の損傷が生じて変形が進行します。つまり、前十字靭帯が断裂したままスポーツ活動を継続すると、繰り返す膝崩れにより変形が進行して日常生活にも支障を来す危険が大きくなります。

前十字靭帯損傷(ACL損傷)の原因CAUSE

前十字靭帯の損傷(断裂)は、主にスポーツなので強く膝をひねったり、ジャンプした時の着地、急な方向転換が原因で起こります。靭帯にひねりや引き延ばされる力が加わることで、靭帯の全部または一部が断裂して、不安定な状態になります。

前十字靭帯損傷(ACL損傷)の症状SYMPTOM

靭帯を損傷(断裂)すると、動けなくなるほど激しい痛みを生じます。時間の経過とともに腫れが見られ、膝を曲げたり伸ばしたりすることが困難になってきます。通常は、1ヶ月程度で通常通り日常生活を行えるぐらいまでには改善が見られますが、膝の不安定感や、膝が抜けるような感覚を生じることもあります。

前十字靭帯損傷(ACL損傷)の診断・検査DIAGNOSIS

まず触診により、靭帯が正しく機能しているか確認するためにテストを行います。

ラックマンテスト

膝を30度くらいに曲げた状態で、大腿骨と脛骨を前後に動かすことで、靭帯が機能しているか確認します。

前方引き出しテスト

膝を90度くらいに曲げた状態で、脛骨を前方に動かすことで、靭帯が機能しているか確認します。

ピボットシフトテスト

膝をひねって伸ばした状態から曲げていき、不安定さがないか確認していきます。

そして、靭帯の他にも半月板や軟骨など他の組織の状況なども確かめるためMRI検査を行います。

前十字靭帯損傷(ACL損傷)の治療TREATMENT

一旦損傷した前十字靭帯は、足関節や肘関節の靭帯などとは異なり、装具療法や切れた靭帯の断端を縫合する修復術では治る確率が極めて低く、靭帯を作り直す靭帯再建術が必要となります。靭帯再建術は関節鏡(膝の内視鏡)を用いて行いますが、使用する移植腱の種類(ハムストリング腱、膝蓋腱など)や、移植腱の設置・固定方法によりいくつかの方法があり、当院では、スポーツの種類や筋力、年齢などにより、症例に最も適した術式を選択しています。ここでは代表的な2つの術式を紹介します。

(鏡視下解剖学的2重束再建術)

移植腱としてハムストリング腱を用います。3㎝程度の小さな皮切で腱を採取して、関節鏡を用いて本来前十字靭帯があった場所(解剖学的位置)に再建します。前十字靭帯は2つの違った機能をもつ束(前方内側束と後方外側束)からなっていますが、2つの束をそれぞれ再建します。移植腱の両端はエンドボタンという小さなチタン製のボタンやスクリューで固定をします。この術式に、解剖学的な位置に移植腱を設置できるため、部分的な損傷やゆるみが少なくできる、移植腱が骨と結合する面積が大きくなる、2つのループ状の移植腱を別々に固定するため、移植腱内の線維にかかる緊張が均一になるなどの利点があります。

(鏡視下解剖学的四辺形BTB再建術)

移植腱としてBTB腱を使います。BTB腱は膝蓋骨と脛骨を結ぶ膝蓋腱の中央部分を上下の骨片をつけて採取したものです。骨片を四辺形として解剖学的位置に設置することで、2つの束の走行を本来の形に近い形で再建できる上に、骨と骨での強固な癒合が期待できます。但し、膝前方に皮切を置く必要があり、より積極的な理学療法が必要とされます。

いずれの術式も適切に行えば明らかな成績の差は認められていませんが、適切な関節鏡手術手技で行われる必要があります。当院(整形外科河村医院/大阪市港区)は、関節鏡技術認定制度の認定医が在籍する医療機関です。

【リハビリテーション】:リハビリは術翌日から開始しますが、術後1~2週間のニーブレース固定を行い、その後膝可動域訓練や筋力増強訓練を行います。3~4ヶ月頃よりランニングを開始し、6~8ヶ月でスポーツ復帰としています。

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